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 黎夕・本文サンプル・キリノ
「恋愛的な努力」


 寵妃のもとに送り届けられる物というのは、まさに千差万別である。
 華美な金銀の装飾品から、高級な反物、うちの娘を妃にするようにと嘆願する手紙、明らかに怪しげな匂いが漂っている香、調べたら毒のひとつでも混入していそうな食品などなど。
 狼陛下の寵愛を独り占めするただ一人の妃に、取り入りたいのか殺したいのか、はたまたどう利用してやろうかと舌なめずりしていそうな送り主が見えてくる。
 浩大は楽しそうな顔で、催眠作用がある香を叩き割って懐に入れた。
 一度は毒蛇が入っていた経験を生かし、夕鈴は自分に届いた献上品の確認は、必ず人の目があるところでするようにしている。浩大が来てからは、掃除婦バイトの合間に二人して無数の箱を開けるのが、ちょっとした楽しみになっていた。
 何かあっても夕鈴が妙な気を起こさないようにと、危ないものは浩大がそれとなく処分している。
「あ、氾大臣から、新しい反物!」
「あの家も懲りないネエ」
「人の善意にそんなこと言わないの。失礼でしょ」
 きらきらと輝く、特殊な金糸が編み込まれた布だった。肌触りがよく、風通しもよさそうだ。これからの暑い季節にはぴったりである。
 夕鈴が楽しそうに美しい布や装飾品を堪能している間に、浩大が食品の類を毒味がてらに片づけていく。舌にぴりりとした痺れを覚えたいくつかを脇に置き、下の方に埋まっていた箱を卓に上げた。
 珍しい装飾の箱だった。開けると、思わずにやりとゲスな笑いがこぼれてしまった。
 …まあ、確かに『寵妃』への贈り物としては正しいかもしれないネ。
 最初、狼陛下の臨時花嫁として連れて来られた夕鈴は、今は名実ともに狼陛下の妃の身分である。
 寝所もともにするし、口づけも甘い告白も演技ではなく本物だ。とはいえ、正体不詳の下っ端妃。『こういうもの』が贈られてきて然るべきかもわからない。
 笑いを必死に堪える浩大に、しばらくして夕鈴が気づいた。
「どうしたの、浩大?」
「ん、イヤイヤ…ちょっとおもしろい贈り物だったから」
 ほいよ、と見せられた箱の中身をかきわける。夕鈴の指は、最後の白い布をめくったところで震え出した。
「…っぎゃあーっ!」
 あまりの衝撃に、夕鈴は顔を真っ赤にして箱を宙に放り投げた。浩大が箱を受け止める。満面の笑みは邪悪だった。
「あっはははは!予想以上の反応だよっ、お妃ちゃん!」
「おもしろがるなあああああ!」
 箱に入っていたのは、淫らな性の道具や着物の一式だった。ご丁寧なことに、長ったらしい説明書まで同封されている。
 顔を真っ赤にして部屋の片隅に避難した夕鈴にも聞こえるように、浩大が説明書を大きな声で読み始めた。
 男性器を模した彫刻品は、驚くほど軽い。中が空洞になっていて、液体を入れて噴射する仕組みがあるらしい。媚薬やどろどろの液体を入れるのがよいとされ、女性器に挿入して使うらしい。 
 次に、小さな薬箱に入れられた小瓶が出される。八本の瓶の中身は媚薬だった。陰部に塗り付けて強力な痒みを発生させるもの、体液の分泌を促進するもの、排卵を促すもの、妊娠していなくても母乳を出せるものなど。
 さすがに毒の可能性があるので、浩大がすべて瓶ごと片づけた。夕鈴はもはや確認する気にもなれない。
 残ったのは幾枚も畳まれて入っていた、淫らな衣装だ。最初に手にとったのは、透明な布で作られているさわやかなもの。衣服にあるまじき造りで、陰部と胸にだけ布が無い。体を覆う衣服は半透明の桃色で、説明書によれば女性の膣内の分泌液に反応して色を紅色に変えるらしい。行為が激しくなると、下半身は足首に至るまで紅色に染まり、淫らさが強調される。行為が佳境に入ればより官能的に寵妃を飾り付けると、説明書は力説する。
 しばらく無抵抗で聞いていた夕鈴も、ついには立ち上がってわなわなと叫びだした。
「もう!いったいぜんたいなんなのよこれ!」
 浩大に飛び掛って中身を処分しようとするが、隠密の素早さには敵わない。
「狼陛下の寵妃サマへ寵愛を途切れさせないように、どうぞお使い下さいって感じかなー。よかったじゃぁん、お妃サマ。心配されちゃってるんだぜー」
「余計なお世話でしょおおおおおお!」
 にひひ、と笑う浩大が他にも何枚も入れられた薄い衣服を広げていく。
 陰部を強調させるために下腹部にだけ纏うドレス。下腹部は薄すぎる絹布一枚を軽く覆わせるだけ。
 次は、随所に小さな鈴が縫われていて、体を揺らされると綺麗な音が鳴るもの。男に挿入されて上下に打ち下ろされれば、喘ぎ声と同時に鈴の音が聞こえる仕様になっている。
 最後は底の方にしまわれていた、人間の体液で溶ける糸で編まれた白陽国風の衣服だ。試しに浩大が舐めてみると、甘くほぐれて腰の部分に穴が開いた。乱れれば乱れるほど、陰部がさらけだされてしまうようだ。
 箱が空になると、夕鈴の顔は茹で蛸のように真っ赤になっていた。

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